漫画家まどの一哉ブログ
読書
「白衛軍」 ブルガーコフ作
ブルガーコフと言えば、自分の中では奇想天外な幻想文学の作家としてとらえられているが、これはリアルでマジメなギャグの無い小説だった。しかし面白かった。
ロシア全土においてだんだんとボルシェヴィキの制圧地が増えてくる時代、舞台はロシア内ウクライナ地方の要都キエフである。1917年から1920年頃にかけてこの街を実質支配する勢力はネコの眼のように変わった。敗走を続ける皇帝の軍隊白軍と、勢力を増しつつある赤軍ボルシェヴィキ。その間にウクライナ地方の独立を図る民族主義者。それを傀儡としたいドイツ軍など。こんな場合街に暮らす民衆は誰の指令を受け入れて難を逃れるか、なかなかに容易ではない。
物語はこの街で医師として暮らす長男、その妹、学生である次男という三人のトゥルビン家の人々の戦いを描いたもの。長男アレクセイは軍医として、そして次男ニコルカは学徒兵として、ともに伝統ある皇軍の兵士となりキエフの街を守るために参戦する。しかしこの時点で既にソビエト革命は成立しているらしく、トゥルビン家の兄弟が出陣したその時、白軍の上層部は白旗を揚げて街から脱出してしまう。あわれアレクセイやニコルカは後ろ盾なきまま取り残されたのだ。このときキエフの街を制圧したのはボルシェヴィキではなく、ドイツ軍より権限を委譲されたウクライナ民族独立派のペトリューラ軍だった。キエフ市街でペトリューラ軍に包囲されるなか最も最後に包囲網を脱出し、我が家へたどりつくまでの兄弟それぞれの苦難の道が興奮するところだ。
さて作者ブルガーコフは既にソビエト政権が確立した後で、この白軍の人々に心を寄せた物語を書いており、この内容でソビエトで作家として食っていくのはまさに綱渡り的な離れ業であったらしい。その後スターリンと一時和解できたが、多くの時間を作家としては仕事を失ったまま過ごしたのだから。