漫画家まどの一哉ブログ
「春風夏雨」 岡 潔
読書
「春風夏雨」 岡 潔 著
「春風夏雨」 岡 潔 著
戦前・戦後を生きた高名な数学者はなにを語るか?
戦争が始まって、死なせるには惜しい若者が、それも良いものからどんどん死んでいく。これではいけないと思ったが、世の中言える雰囲気ではない。戦後は進駐軍の持ち込んだ3つのS(セックス・スクリーン・スポーツ)によってこれまででは考えられない学生が増えてきた。そこで著者が数学以外のよりどころにしたのが、光明主義という仏教思想である。自我を第一に尊重する世の中だけど、それは本能のままに支配される無明の状態であり、われわれは小我を乗り越えて真我の境地に至らねばならない。云々…。
だいたい仏教思想をその特有の用語で語られても、とりあえず仮に頭で理解しておくくらいが関の山で、実際修行でもしてみなければ否定も肯定もできないものだ。岡潔の熱弁も否定はしないが、読み物としてはとくに面白いものではない。
それよりやはり天才数学者の少年期や留学先のパリでの思い出、奈良女子大の教師生活、寺田寅彦の噂話などのほうが野次馬かもしれないが読んでいて愉快だ。どこかのお寺に「無明の間」を作ってそこにピカソの絵を置き、となりを不動明王の間にして、ピカソの無明を抑え込むとか、妙なこと言う。
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