漫画家まどの一哉ブログ
「明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち」 山田詠美
読書
「明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち」
「明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち」
山田詠美 作
連れ子同士で再婚した夫婦と4人の子供達。母親の溺愛する長男の突然の死により平和な家庭は崩壊してゆく。アルコール中毒となった母親。大切な人が明日死ぬかもしれないという思いを心の底に抱きながら成長していく3人のこどもたちが、それぞれの視点で描かれる。
母親が死んだ長男にあまりにも依存していたため、残された家族全員が気持ちを切り替えることができないという特殊な状況。普通の供養と一般的な法事をしていればこんなことにはならなかったかもしれない。自分も愛する人も明日死ぬかもしれないと考えることによって緊張感も生まれるが、一歩踏み出す勇気も持てなくなってしまう。
かなり濃い内容でずっしりと重く、遊びのないストレートな作品。現代人、とりわけ家族を描いたものに共感しようとはまったく思わないのに、読みはじめたらなんとなく読んでしまったのは、自分も現代人だからしょうがない。ラストではじんわりと感動した。いつのまにか変わっている一人称の使い方が心憎い。
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