漫画家まどの一哉ブログ
「椿姫」 デュマ・フィス
読書
「椿姫」 デュマ・フィス 作
「椿姫」 デュマ・フィス 作
かの有名なオペラの原作。大デュマの息子デュマ・フィスのヒット作。
冒頭、悲嘆にくれる男主人公アルマンが今は亡き恋人マルグリットの墓を移送するため死体認知を行うまでのくだりが異様におもしろく、わくわくして読みはじめた。ところがアルマンがかつての思い出を語る形で、女主人公マルグリットが登場すると、とたんにありきたりの恋物語になってしまい、面白みは半減した。
これはここで描かれる女というものが、19世紀のフランス小説ではたいがいそうなのだが、恋愛しかやることがない画一的な存在であるからだろう。マルグリット本人は娼婦であり貴族達とは違うのだが、ステージが有閑階級の日常であり、男も女も誰も働かないから話題の乏しさは拭いがたい。
もっとも若きアルマンも思慮浅い感情的な男でちっともおもしろくない。彼がマルグリットを失ってからがおもしろい。死を前にした病床のマルグリットや、彼女が死んだあと絶望の日々を送るアルマンなど、恋の駆け引き以外のほうがはるかによい。
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