漫画家まどの一哉ブログ
「イキルキス」 舞城王太郎
読書
「イキルキス」 舞城王太郎 作
「イキルキス」 田舎の中学校で女子生徒が次々と謎の突然死。主人公の少年は同級の女子と自宅の蔵の中で初めてのキスに至りおっぱいも触るが、ひょっとしたらこれで謎の突然死をくい止めることができるかも。やがて街の上空を怪音とともに飛行する物体が現れ怪死事件は一件落着する。
以下2作に比べてこの作品は人物の行動心理がまともな範囲で推移して納得できるテンポで進む。エロ妄想も盛んな中学生が可愛らしい。この表題作がいちばん楽しい。
以下2作は主人公が犯罪に至る心理をとりたてて分析するでもなく、そこはあえて簡単に済ませることにより話がどんどん進む仕掛け。それはそれでアリだ。
「鼻クソご飯」 性犯罪者の独白だが、露骨な下ネタを読むのは正直ツライ。
「パッキャラ魔道」 交通事故で父親が家族を見捨てて人命救助に走ったことから離婚に至る夫婦。次男の小学生を語り手として、彼がおおいに道を外れながら大人に成っていく過程を描く。
青少年の内面を緻密に追っていくわけではなく、サクサクと非行や蛮行が連続して、このスピード感が人生のなにもかもがネタであるかのような、ある種達観した感覚を生む。
自分は同時代の人間達の人生物語にあまり共感できたことはないが、このくらいの距離感があれば、コンテンポラリーなものも読めるかもしれない。
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