漫画家まどの一哉ブログ
「ワット」Watt
読書(mixi過去日記より)
「ワット」Watt
サミュエル・ベケット作
二十歳の頃以来の再読。
冴えない流浪の男ワットは、目的地に着く前に汽車を降り、やがてノット氏の邸宅へたどりついた。交代に屋敷を離れる男のあとを継いで、ノット氏宅での召使いとしての暮らしが始まったのだ。その代々の召使達の仕事ぶりを、こまごまと語り継ぐといった内容の小説。
とは言ってもノット氏と召使達の日常は、ただただ分裂症的だから、ふつう全くどうでもいいことが、やたらしつこく描写される。
例えばノット氏の食べ残しを、いかに必ず全部近所の犬に食わせるかについて、犬の飼い主一家の家系から語り起こす。ノット氏の靴と半靴下と長靴とスリッパを、裸足も含めて左右それぞれどのように履くか?について、ありえる組み合わせを全て書き尽くす。この組合せの羅列は、いくどもくり返され、ノット氏と箪笥と化粧台と室内便器の日々変わる位置関係や、毎日変わるノット氏の肉体的特徴(ある日は太っていて背が高く金髪、次の日は痩せていて背が高く赤毛、また次の日は痩せていて中背で金髪、また次の日は太っていて背が低く褐色の髪…などなど要素はもっと多いので、組合せも2ページ以上に及ぶ)。
その白眉は、ある委員会で5人のメンバーが、それぞれ顔を見合わせようとして、すれちがう場合の記述が延々6ページ程!
やがてワットは後任の到着とともにノット氏邸を離れ、降り立った駅からまた旅立っていく。
ロマンでもなく、アンチロマンでもなく、およそ小説作法を破壊して書かれた、ナンセンスを冗談以上に徹底した、これほど不毛であることに感動する小説は他にないと思った。
「ワット」Watt
サミュエル・ベケット作
二十歳の頃以来の再読。
冴えない流浪の男ワットは、目的地に着く前に汽車を降り、やがてノット氏の邸宅へたどりついた。交代に屋敷を離れる男のあとを継いで、ノット氏宅での召使いとしての暮らしが始まったのだ。その代々の召使達の仕事ぶりを、こまごまと語り継ぐといった内容の小説。
とは言ってもノット氏と召使達の日常は、ただただ分裂症的だから、ふつう全くどうでもいいことが、やたらしつこく描写される。
例えばノット氏の食べ残しを、いかに必ず全部近所の犬に食わせるかについて、犬の飼い主一家の家系から語り起こす。ノット氏の靴と半靴下と長靴とスリッパを、裸足も含めて左右それぞれどのように履くか?について、ありえる組み合わせを全て書き尽くす。この組合せの羅列は、いくどもくり返され、ノット氏と箪笥と化粧台と室内便器の日々変わる位置関係や、毎日変わるノット氏の肉体的特徴(ある日は太っていて背が高く金髪、次の日は痩せていて背が高く赤毛、また次の日は痩せていて中背で金髪、また次の日は太っていて背が低く褐色の髪…などなど要素はもっと多いので、組合せも2ページ以上に及ぶ)。
その白眉は、ある委員会で5人のメンバーが、それぞれ顔を見合わせようとして、すれちがう場合の記述が延々6ページ程!
やがてワットは後任の到着とともにノット氏邸を離れ、降り立った駅からまた旅立っていく。
ロマンでもなく、アンチロマンでもなく、およそ小説作法を破壊して書かれた、ナンセンスを冗談以上に徹底した、これほど不毛であることに感動する小説は他にないと思った。
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