漫画家まどの一哉ブログ
「ヘリオガバルス」または戴冠せるアナーキスト
読書
「ヘリオガバルス」または戴冠せるアナーキスト
アルトー 作
前に難解ながらもわくわくと読んだ記憶があり、再読したがやはり面白かった。
ローマ帝国史上最悪最低の少年皇帝。母親らシリアの女性たちの権謀術数の結果、わずか14歳で皇帝の地位につく。ローマ入城の時は10トンの陽物像を台車に乗せて、300頭の牡牛に引かせ、胸もあらわな300人の女たちや、オーケストラ、踊り子たちと共に、ローマに尻を向けて犯されるカタチでやってきた。
彼ヘリオガバルスはまったく自らの欲望(男と寝ること)に忠実な人間でそれを隠しもしなかった。自身に紅白粉を塗り、女装して男を呼び込み、王室を公然たる娼窟それも男娼窟としてしまう。官僚や軍人などなんの価値もない人間であり、民衆の中からチンコの大きい者をピックアップして要職につける。連日の豪華な食事にも全く予算を出し惜しみしない。そうやって快楽にふけり、戦争などすることもなくこの体制が4年も続いたのだから驚きだ。もちろんこの伝説には歴史家の装飾や、アルトーの誇張された描写が含まれているだろうが、なんともシュールレアリスティックな雰囲気があって自分好みだった。
この作品は歴史小説ではあるが、アルトー哲学もおおいに混ざっていて、詩的言語を駆使した論理展開は、はっきり言って自分にはチンプンカンプンに近い。だがそれもまた良しだ。
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