漫画家まどの一哉ブログ
「ナイフ投げ師」
読書
「ナイフ投げ師」 スティーヴン・ミルハウザー 作
「ナイフ投げ師」:超人的な技を持つナイフ投げ師の舞台。驚くべき技術で繰り広げられる演目だが、クライマックスでは、的と成る人間の身体を狙ってわざと聖なる血を流す儀式が行われる。薄暗い中で不気味に進行する非日常の世界。いかにも正統幻想文学の怪しい雰囲気いっぱいで堪能した。
「ある訪問」:田舎に定住して結婚したという友人の頼りを受けて、久しぶりに訪ねてみると妻というのは身長60センチもある巨大なカエルで、そいつがテーブルに向かってちょこんと座っているのだ。友人にぴったり寄添うカエルとの一日が淡々と語られて実に妙だ。
その他、街や風景まで売ってしまう画期的な百貨店や、現実離れしたアトラクションで満たされた遊園地。生きているかのように動く精巧に出来た自動人形劇場など、ミルハウザーは空想的な設定を事細かにルポルタージュの方法で述べる作品が多く、小説の情景描写を読むのが苦手な自分としては、やや苦しかった。そういうのは絵で観たいもんだ。やはり登場人物の会話があって、人物目線で話が進む方が楽しい。
「出口」:軽い気持ちで人妻と浮気した主人公。相手のダンナが貧相な小男だったのでナメてかかっていると、早朝呼び出されて銃による決闘に至るという悲劇。人生油断ならぬ。
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