漫画家まどの一哉ブログ
「トモスイ」
読書
「トモスイ」 高樹のぶ子 作
一度は読みたいと思っていた高樹のぶ子。この本はアジア各国の文学者を尋ね、作者自身も触発されて短編を書くというプロジェクトの結果出来た小説をまとめたもので、ふだんの長編とはかなり違うだろうと推測するがこれはこれで面白く読めた。
「トモスイ」:夜釣りに出かけて、トモスイとよばれる何やら裸の貝のようなものを釣り上げる。それは地元の名物で、突起物と反対側の穴との両方から口を付けて、ちゅるちゅると内容物を吸うととても旨いといういささか気味の悪いお話。
「天の穴」:台風の夜、運転中に少年に接触しそうになるが、彼は台風の目を追いかけているのだった。車に乗せてみると気象天文にやたら詳しい。やがて見つけた台風の目のむこうに見える渦巻銀河。彼を残して死んでいった肉親たちは、いつの日か台風の目からこの世に落ちてくるという。
「どしゃぶり麻玲」:なにもかも運命と捉える少女麻玲。雨宿りのデパートの玄関で出会った彼女に案内され、同行した写真展は彼女の父親の遺作展だった。だが実は麻玲はすでにこの世の人ではなく、主人公の私の心の中で生きる娘なのだ。
「唐辛子姉妹」:そもそも韓国の唐辛子は、豊臣秀吉によって伝えられたという伝説を語り合う姉唐辛子と妹唐辛子。二人はやがて摘み取られ、麻袋に入り、そのあと瓶に詰め込まれて赤くなった。二ヵ月後あるレストランでいっしょにペーストとなり、人間の腹の中へ。間もなく大阪へ渡り、真っ赤な水となって排泄されたのだった。
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