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「ステパンチコヴォ村とその住人たち」 ドストエフスキー

「ステパンチコヴォ村とその住人たち」
ドストエフスキー 作
(光文社古典新訳文庫 高橋知之 訳)

田舎の叔父は無類のお人好し。似非インテリのペテン師にまんまと騙され、家を乗っ取られても感謝感謝の有様。この異常事態にペテルブルクから駆けつけた甥っ子青年が出会う一癖も二癖もある居候たち。ドストエフスキーの忘れられた傑作長編。

叔父という人物がお人好しをはるかに超えて、言われるがままに自己批判を繰り返し、まわりの人間を簡単に持ち上げて讃えてしまう。ちょっと考えられない極端な人格。
そして実は劣等感の固まりながら口先だけの説教をたれながし、田舎の人々の尊敬を一身に集めてしまう似非インテリの居候ペテン師。
このいびつな二人のカップリングがこの作品の基本構造。

ペテルブルグからやってきた甥っ子の青年は物語の語り手でもあり、ペテン師と堂々対決するのかと期待したが途中からは傍観者に終始して、いっかなペテン師に罰は降らず、読者はカタルシスが得られないままモヤモヤする。
「罪と罰」の3分の1ほどの長さながら登場人物は多く、老若男女それぞれの性格設定が際立っていて楽しい。会話の応酬で話がどんどん進んで心地よく、深いテーマがあるわけではないが感情の機微が赤裸々に描かれ充分な読み応え。やっぱりうまいんだな。

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