漫画家まどの一哉ブログ
「守銭奴」 モリエール
「守銭奴」
モリエール 作
(岩波文庫・鈴木力衛 訳)
あまりにケチで金のことしか頭にない父親。あろうことか息子の恋人を再婚相手に選び混乱をまきおこす。その徹底した守銭奴ぶりが愉快な喜劇作品。
モリエールを代表する人気作品だということで読んでみたが、人物がカリカチュア的に描かれ過ぎていていまひとつ興奮しなかった。金銭第一主義の人間は現実にも存在しているので、「そうそうこんなやついるよな」とリアルに思わせる方向もあったとは思うが、そうではなくひたすら戯画化しているので、わかりやすいがもの足らない。
ストーリーは父親の度を越した守銭奴ぶりと結婚話をめぐる周囲との軋轢と混乱が繰り返され、それ以外のことは起きないので単純と言えば単純だ。これも喜劇ゆえの構成だろうが、かなり本気で笑わせようとしているので致し方ない。短い会話のやり取りが多く、このテンポが舞台にメリハリをつけていると思う。
実際この父親は家族や従僕みんなに嫌われているのだが、お金を持っているので逆らうことができない。この点ではリアリズムでありブルジョアジー勃興期の社会風刺と言えるかもしれない。
若い娘に思いを寄せる高齢男性は、この間読んだ説教節でも出てきて、作中顰蹙をよんでいるのだが、ゲーテやブルックナーが有名なように実際にもそんな男性は多い。歳をとって前頭葉が緩んでいるのだ!?
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