漫画家まどの一哉ブログ
読書
「コンラッド・ハーストの正体」 ケヴィン・ウィグノール 作
プロの殺し屋コンラッド・ハーストは、この仕事から足を洗おうと決心した。その為には自分の素性を知る4人の関係者を抹殺しておかなければならない。ところが一人殺した時点で、コンラッドは意外な真実を知る。自分に仕事を振っていたボスは実は偽物。後の二人は既にコンラッドの動きを恐れて行方をくらましている。しかも自分はCIAに監視されていて、次々と近づいてくる女たちもじつはスパイかもしれない。果たしてコンラッドは自分を利用していたCIAの男に会い、復讐を遂げることができるだろうか?
やはりときには動きの大きい痛快なエンターテイメント作品も読みたい。ところがいざ接してみると多くはすぐ投げ出してしまうのは、ひとつには文章が汚かったり、文体が馬鹿げていたり、また設定にリアリティが感じられなかったりするためだ。ときには半分まで読み進めたものでも、主人公の行く末に関心が持てなくて止めてしまったりする。
だから自分に合う痛快なエンターテイメントにめぐりあうのが一苦労だ。この作品は書店でパラパラ見て直感で買ったが正解だった。不快なセックスシーンも無いし、銃を使うシーンもじつにあっさりしていて助かった。主人公が失った純愛を大切にしているPTSDの青年というところも良かったのだろう。
エンターテイメントなので、主人公の殺人者としての迷いや葛藤をそれほど描いているわけではない。いとも簡単に人を殺してしまう。まだ相手との対峙と緊張がピークに達するまえに簡単に銃を撃つので、読んでいてびっくりするが、そこが作者のテクニックなのだった。とは言えこの種のものを読み馴れているわけではないので、自分にとってはいろいろと意外性の連続が感じられたのかもしれない。