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漫画家まどの一哉ブログ

   
幻燈展「つげ義春とシュールレアリズム」
幻燈展初日のイベント、山田勇男氏と原マスミ氏による対談「つげ義春とシュールレアリズム」を聞いてきた。つげ義春のシュール作品に対する山田氏の思いといったものを、原氏が聞き役として受け止めていくといった進行だった。

両氏の体験でもあるが、ダリであったりデルボーであったり、若い頃始めてヨーロッパのシュールレアリズムに出会いショックを受ける。だがなぜその作品に自分が感銘を受けるかは、いつまでたっても謎のままで、この解らないというところにその作品が自分にとって大切なものになっている理由がありそうである。

ところがヨーロッパのシュールレアリズムは、やはり我々日本人にとってはその成り立ち自体がリアルではない。我々は普段の彼らの生活を知らない。もちろんシュールレリストたちもけっして裕福であったとは思われないが、生活レベルでの表現となると、われわれ日本人にとってはどうしてもリアリズムではなく、虚構の上での遊戯に感じられてしまう。

翻ってつげ義春作品であるが、あきらかに貧乏な、拭けば飛ぶような紙と木で出来た家を舞台とした、生活のリアルそのものがある上でのシュールレアリズムである。これこそが伝統的なシュールレアリズムの歴史を勉強していても得られない、つげ独自の世界であり、われわれは始めて日本人の生活感に密着したかたちでの無意識を見たのではないだろうか。

無意識というものは無意識故にわからないというのは当然だが、だからこそ作品はわからないままに意味があって、わかってしまえばそれは意識となり作品の魅力は失われてしまう。無意識のわからなさをそのままに漫画として意図的に表現し得たつげ義春の作品世界が、いかにすぐれているかわかるというものである。

というような結論が導きだされた濃密な時間だった。ように私は思った。

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