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漫画家まどの一哉ブログ

   
樋口一葉を読む
読書
樋口一葉を読む


男が主人公ではこう奇麗な文章は出てこまい。と思われるほど流麗で情緒のある文章が心地よかった。長文でもさらさらと読まされてしまう。さすがに恵まれない境遇で苦労する女のはなしが多いが、どの女主人公にも作者一葉のルサンチマンが影を落としている。女が生きていくためにどうやって収入をえるか、いつの世にも通じる永遠のテーマが描かれる。


「大つごもり」:お峯を育ててくれた優しい叔父夫婦だが、叔父は病を得て収入の道途絶え、年内に2円の借金を返すことができない。八歳の弟も学校がひけると天秤棒をかついで行商の手伝いをしているありさま。お峯はきっと奉公先の大店から2円借りてくると約束するが、これは現実には不可能に近い計画であった。ついに主家の引き出しより2円を盗み出してしまうが、折よく主家の放蕩息子がその後財布ごと頂戴していったので、犯行はばれなかった。主人公は清廉な女子といえども常に潔白でもいられない。そこを書くのは珍しい気がした。

「十三夜」:身分の違う上流階級の資本家に見初められて嫁いだお関だが、夫からのいじめに耐えきれず、ついに戻らない決心をして夜遅くに実家を訪れる。家ではお月見のお団子が飾られ、いかにも気の張らない庶民の暮らしぶりである。お関は意をけっして両親に離縁の決意を訴えるが、父親に諭されその夜は嫁ぎ先に帰ることに。その帰り道に乗った俥の車夫は、かつて自分に心を寄せていた幼なじみの零落した姿だった。人の運命さまざまである。現代ドラマを見るような趣だった。

「うつせみ」:街中でも緑に囲まれた静かな貸家で、病身を横たえているのは雪子である。気分が良い時には幼子のように両親に甘えてすごすが、いざ狂気となると自死するために飛び出してゆこうとするのを周りの者が必死で取り押さえなければならない。過去に愛した男性が死を遂げたのは、みんな自分のせいと思い込み、苦しげに胸を抱いて身悶える。両親はじめ介護するものみなすっかり疲れきっているのだが、雪子の狂状は日に日に増していくのだった。リアルでしみじみと悲しい小説。

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