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漫画家まどの一哉ブログ

   
「新世帯」
読書
「新世帯」
あらじょたい
徳田秋声 作

小僧時代からの苦労が実ってようやく酒や醤油や乾物などを売る自分の店を持った新吉。朝から晩まで働きに働いて商売以外に余念がない。やがて周りの人々の世話で嫁をもらうこととなり、薦められるままに農家出身の娘お作と所帯を持つこととなった。
ところが奉公先(バイト先)で評判が良かったというお作だが、何の役にも立たない。商売の手伝いもできないし機転を利かすことも無い。家のことも望んで大きな買い物をする事は無いが、工夫して倹約するということもない。言われたことは失敗しながらもやるが、進んでこうしようという気配り・気働きがいっこうにない女だった。
もとよりせっかちな新吉にしてみれば、とんだ愚物をつかまされたわけで、しじゅういらいらしっぱなしだが、子供も生まれる予定もあり、時々はやさしくしてもやる。
そんなお作が出産を控えて実家に帰っている間に、警察沙汰をおこして入牢する事になってしまった友人の妻お國が行く宛もなく転がり込んでくる。これがお作とは正反対のさばさばしていてなんにでも気の付く女だった。

という事件性をはらんだ展開だが、新吉とお國の間になにかが起きるわけではなく、それぞれの個性豊かな感情の推移が丁寧に描かれて、市井の人々の暮らしというものがしみじみと感じられて楽しい。こんな明治期の小説を今読む人も少ないかもしれないが、読んでみると現代文学となんら変わらない。タクシーが俥に変わっているだけだ。みんなが着物を着ているだけだ。これが初期の自然主義文学の楽しさである。翻って漫画という分野もこの自然主義をしっかり通ってこないとロクな者にならないだろうが、漫画の自然主義とは何かというところがなかなかムツカシイ。

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