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「無限の網」草間彌生自伝

読書

「無限の網」草間彌生自伝

 

初期草間彌生はドットばかりではなく、網状に広がる描線で画面を埋め尽くしていた。これが「無限の網」だ。おどろいたことに画家として走り出した当初から、中心のない水玉の反復と増殖という作風で、これは作者の不安・恐怖を解消するためのほかに置き換えられない行為であるようだ。いくら天性の才能と言っても非常に特異な資質だ。

 

またニューヨークではパフォーマンス集団の先頭に立ち、ミュージカルやファッションの企画を進めるなど、社会的には充分適合して渡り合ってゆける人物である。芸術家は創作衝動を作品自体に解消させてしまえば、ほかに人格面で破綻している必要はまったくない。このへんがおおいに勘違いされてはならないところで、創作衝動はたとえそれが狂気を含んだものであろうと、作者にとっては自然と持っているもので、あとはそれを出すだけ。出し切るまではいくらでも描けるし、それ以外の面ではふつうに社会人であって何ら問題はない。

 

結局芸術は自分の都合であり、全ては自己流でやるしかない。つまり草間彌生の自伝を読んで、本人がああしたこうしたと言っていることに他人はまったく口を挟めないのであって、草間彌生本人がそうなんだから仕方がない。嫌いな人は作品を見なければいいだけのことで、気に入る人がどれだけいるかも計算してもしょうがないことである。

 

もし芸術が努力や練習で到達できる世界に過ぎなければものすごくつまらないものとなるであろう。また仮にマーケティングの観点から企画されたとしても、それだけでしかなかったらやはりつまらない。こんなことを思うのも当然自分の属する漫画の世界を少々省みてのことであって、草間彌生の作品内容に誰も口出しできないように、漫画も他人のアドバイスが不可能な個性のほうがうんと面白いよ。

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