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「文壇五十年」 正宗白鳥
読書
「文壇五十年」 正宗白鳥 著


1879年生まれで1962年まで生きていた正宗白鳥が見た近代文学裏面史。正宗白鳥はほんの少し読んだことがあるだけだが、その印象どおりまことに冷静な筆致で主に明治文学草創期のようすが語られる。


いちばん意外なのは田山花袋「蒲団」の影響の大きさである。いわずと知れた自然主義文学の革命的作品だが、藤村・鴎外・漱石など名だたる文豪が「蒲団」から影響を受けているというのだ。島村抱月などヨーロッパから帰った者が、海外文学の素養をいかしてどんな画期的な名作をものにしたかというとそんなことはなく、結局影響を与えたのは花袋の「蒲団」なのだった。これは実際に文壇に身を置いた著者ならではの実感だ。つまりこの自己暴露小説を読んで皆「あんなものでいいのか」と驚いたというかバカにしたのである。あんなものなら自分にも書けると言って広がり出したのが近代日本の身辺小説なのだ。チェーホフやモーパッサンよりこの暴露小説のほうが影響力があるのが、どうしたって日本だなという気がする。それでいて白鳥は「蒲団」じたいはたいしておもしろくもない小説だと言っているのである。


ほかにも文壇で話題の文豪がとりあげられるのだが、たいていこの口調で「たいしてなんとも思わない」という感想である。感激して評価しているのは歌舞伎役者の一部の演技のみで、かといって話題作をこきおろしているわけではなく、まことに冷静なものである。あまり社会的政治的スタンスをとるタイプではない人であるが、戦中から戦後にかけての激動はどこ吹く風みたいなようすで、今後の小説はがらりと変わるのではないかと言いながら、やはり昔話に花が咲く感じである。

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