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漫画家まどの一哉ブログ

   
「巨匠とマルガリータ」
読書
「巨匠とマルガリータ」
ミハイル・ブルガーコフ


モスクワ市街。作家協会会長が公園でツルリとすべったまま、電車にはねられ首が飛んでしまったのを皮切りに、作家・劇場関係者のまわりに次々と起こる怪事件。黒魔術のショーでは10ルーブル紙幣が降ってきたり、豪華衣裳が女性客に与えられたりするが、数時間後には紙くずと消える。劇場支配人たちは一瞬で遠隔の地に飛ばされてしまう。これらはすべて黒魔術ショーを行った4人の悪魔たちの仕業なのだが、その中のひとりはでかい黒猫なのだ。
一方、ローマ帝国総督ポンティウス・ピラトゥスは、ヨシュア(イエス)を処刑してしまったことにどうしても悔いが残り、毎日を鬱鬱と過ごしていたが、実はこの挿話はモスクワの精神病院に収容されている巨匠と呼ばれる作家の手による未発表の作品であった。
巨匠の愛人マルガリータはぜひとも巨匠を救出し、この未発表作を世に出そうと強く願う。そこへ実際のピラトゥスとヨシュアの現場を目撃していたくだんの悪魔たちが協力し、マルガリータは魔女となってほうきにまたがり、モスクワの空をかけめぐり、批評家のアパートを破壊し、パーティで悪魔の女王の役目を果たしたりする。
やがて、巨匠とマルガリータは悪魔たちの手のよって今生での暮らしを終え、遠い昔ピラトゥスの生けるローマで安寧の日々を得るのだった。


といったかなり破天荒で荒唐無稽な小説。ドタバタ劇の如く動きの多い話で、空飛ぶシーンのスピード感は秀逸だった。また、人なのか大型のネコなのか?おかしなキャラクターも登場して、落ち着いたリアリズムを味わうことはできないが、当時のソビエト社会を風刺しているからといって単純な寓意小説でもないから安心だ。ナンセンスな幻想とリアリズムが混淆して同居するという作風は、まさに自分のスタンスと同じといってもよく、今まで世界幻想文学の中でポーとホフマンを座右に置いてきたが、この際ブルガーコフも仲間に加えたいものである。

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