漫画家まどの一哉ブログ
「人種は存在しない」人種問題と遺伝学 ベルトラン・ジョルダン
「人種は存在しない」人種問題と遺伝学
ベルトラン・ジョルダン 著
(中央公論新社・山本敏充 監修・林昌宏 訳)
遺伝学の成果により人種概念の無効性を明らかにし、遺伝子を理由とした人種差別に異議を唱える。
ここで「人種」というのはかなり大きな枠組みで、アジア系・アフリカ系・ヨーロッパ系などのこと。日本人・韓国人・中国人などはもちろん人種ではない。その人種のDNAは99.9%が同型である。残る0.1%の違いが体格や肌や髪の色などを決定するらしいが、これは自然選択であって遺伝的形質が親から子へ伝わるようなことらしい。人種差より個体差の方が大きいのだ。
自分の属する人種の優位性を、遺伝子によって科学的に裏付けようとするのは完全に間違っている。しかし孤立した環境で長年生きてきた民族に、特徴的な遺伝的特質が生まれるのは否定できないので、「人種」という概念を狭くとらえられると、遺伝子を理由にされる危険はある。生物学的な厳密さを一般人に期待しなければならないところが難しい。
一般読者にも読めるように書かれているとはいえ、私にとってはさすがにハードな部分はあった。肝心のアレル(対立遺伝子)というものがよく理解できず(対立という言葉に引っかかる)、またマーカーとして利用されるスニップス(一塩基多型)も単純なことはわかるのだが、それ以上の展開はついていけなかった。この辺りはまたの機会に…。
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