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「平等とは何か」 田中将人

「平等とは何か」
田中将人 著
(中公新書)

不平等の何が問題かから始まり、経済的・政治的不平等が明らかにする現代社会の状況を分析。多数の思想家の見解を紹介しながら目指す、誰もが自尊感情を持って生きていける社会とは。

前半は剥奪・スティグマ化・不公平なゲーム・支配の4つの不平等を解決すべき問題として、ロールズの正義論を背景に展開。詳述しないが違和感なく納得できる内容。その後能力主義が公正か、アファーマティブ・アクションの意義についてサンデルを取り入れながら解説。ここまでは静かな読後感だ。(眠かった…)

後半「財産所有のデモクラシー」という聞きなれない言葉をキーワードに、ピケティを紹介しながら経済上の平等について展開されると俄然面白くなった。資本収益率が経済成長率を上回ることによって格段に進む格差社会。超富裕層とアンダークラス(氷河期世代)の出現など、まさに強いものがちの現代社会の有様がピケティの言ったとおりだ。

これをいかに社会的に公平な世界にして行けるか。課税前所得の平等、事前分配の考え方が紹介される。従来型の福祉政策を越えて、ベーシックインカムやタックスジャスティスの意義を数値的に解説。グローバルな累進課税など難題ではあるが、目指すべきは人間の尊厳の維持である。この点が本書の結論につながる視点だった。

政治上の平等については、世襲議員の多さや女性議員の少なさなど現代日本の状況も含めて、経済的影響力が政治的影響力へそのまま転換している問題。インターネット普及後の扇動的な言説の拡散など、メディア利用の不公平もある。世も末だ。選挙に際してはクォーター制(例えば女性議員の割り当て)やロトクラシー(くじ引き選挙)は自分も賛成である。やってみれ!

ハーデン曰く「遺伝による能力の違い」が「人間としての優劣の違い」であってはならない。能力主義のレースを強いられるまま、結果的に絶望死にいたる人生を選ばないため、我々には複数の価値観が与えられるべきで、すべての人が自尊心を持って生きていける社会が目標とすべき平等な社会である。ここが基本。

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