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「ニセ札使いの手記」

読書

「ニセ札使いの手記」  武田泰淳 作(中公文庫)

武田泰淳異色短編集ということだが、なにが異色なものか王道を行く面白さだ。いわゆる深いテーマを抱えた重厚な作品のみを名作の条件としてしまうと、奇譚・幻想譚の類いはみな傍流に置かれてしまうが、これはセンスのないマジメな評者の限界ではないのか? 武田泰淳は名作「富士」で舞台となる精神病院をいろんな狂者の蠢く幻視空間に仕立ててしまったが、その溢れる想像力がこんな手を変え品を変えの短編群を生むのだろう。 どの作品も人物がいきいきとしていて会話が実にたのしい。「富士」の観念的な会話とはまるで違う庶民のリアリティ溢れる会話。戦後を生きる人間のどうしょうもなさが逆にたくましさに見えるようだ。

「ニセ札使いの手記」:ごく平凡な印刷屋の親父さんが、売れない芸人の私にときどきニセ札を渡してくれて、それを使うのが私の役目。たくさんのオツリをもらうような買い物をすればOKというわけ。こんな犯罪が警戒心もなく行われていて登場人物はのんきに飲み屋で貨幣論など闘わせている。親父さんとその娘たちといっしょに遊園地をめぐったりして、とてもニセ札使いという危機感がない。この落差がなんとも奇妙で、そのせいか会話も現実感がなく夢見てるようなおもしろさ。

「「ゴジラ」の来る夜」:とうとう首都圏に映画でおなじみの怪物がやってくることになって、住民が避難する中、決死の特攻隊が組織される。それは宗教家や脱獄囚や映画女優らたった6人で、ビルの上階で体制を整えていると、はたしてやって来た怪物は姿が見えない透明怪獣だった。

「空間の犯罪」:少年時全くの偶然の事故で片足が不自由になった主人公は、ある日町のヤクザの親分からいじめられ、ののしられる。「くやしかったらガスタンクにでも登ってみろ!」これが心のなかでしこりとなって残り、とうとう不自由な足でガスタンクに登り始めた。

 

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