漫画家まどの一哉ブログ
読書
「「死ぬ瞬間」と死後の生」 E・キューブラー・ロス 著
有名な「死ぬ瞬間」シリーズの一冊。
死に行く人々の臨床と精神的なケアの本かと予想していたが、はるかにスピリチュアルな内容だった。著者は精神科医だが主に死を前にした子どもたちに寄添って活動してきたので、具体例は子どもの話が多い。不治の病であと数日で死なざるをえない子どもたちは、皆直感的に自分の死を分かっていて、その態度は恐怖ではなくむしろ運命への悟りと安心である。大人は子どもたちに嘘をついて慰めるのでなく、子どもたちがやり残したことのないように願いを叶えてやらなければならない。
さて、死後の世界である。著者によれば人間は繭と蝶のようなもので、この人生は繭の状態であり死によって肉体を離れ、蝶の状態へと孵化するのだ(幼虫は蛹となって成虫へと変化する過程で、胚だけしか残らないのを思い出す)。
著者が集めた2万5千件以上の臨死体験は、我々がよく聞くものとやはり共通していて、死を迎えるにあたって意識は一度肉体を離れ、横たわる自分を見下ろしている。体外浮遊すると自分の近くに導いてくれる存在がいることがわかる。そして先に死んだ肉親たちが迎えにきてくれる。このとき生前会ったことのない人にも会える(親戚が嫌いで会いたくない人もいるだろうに…)。また、肉体を脱ぎ捨てると時間も空間もない場所に入り、思考と同じスピードでどこへでも行けるが、これは砂漠の真ん中や宇宙空間で死んでも同じだ。ケガや病気の状態で死んでも、このときには健常であるらしい。トンネル・川・門・花畑などといった象徴的な形で描写される場所を通って、光の源へ近づいていくが、それは「宇宙意識」と呼ばれるべき霊的エネルギーの世界である。
この「宇宙意識」を体験するのに、修行したりグルに従ったりインドへ行ったりする必要はなく、日常的にマイナスの感情を捨てればよいそうである。
こういった内容は一般的によく聞くものだが、著者は日常的に死に臨む人々に接し、様々な経験を積むとともに、自分でも遊体離脱を体験しているので非常に説得力がある。安易なトンデモ本とは格が違う。
この本にはより良く生きるための知恵がたくさん書かれているけれども、自分は死後の生への興味本位で読みました。