漫画家まどの一哉ブログ
「迷宮」 中村文則
読書
「迷宮」 中村文則 作
「迷宮」 中村文則 作
この作者のものを何か読んでおこうと思ったが、選択を間違えたか。ミステリー仕立ての短い作品であっという間に読めた。おぞましい一家殺人でしかも密室。ミステリーに詳しくはないがなかなかのトリックが用意されていて、その面では飽きない。
現代作家で文章に味わいのある人にめったに出会わないが、この作品も文自体に鑑賞するところはなく、ただただよどみなく事態が進んでいく。ほんとうは進まなくてもいいから3行読んだだけで脳が快感に満たされるようなゲージツ的な文章を読みたい。
主人公も相手の女性も幼い頃から心に闇を抱えていて、それは成長するにしたがって日常に紛れて見えなくなってしまうのだけれど、実は大人になっても自分で捉えなおさなければならない。と言ったようなテーマらしきものはある。やはりここでも顔を出す現代小説の主要なテーマである「日常」…。ただし心の闇云々は考えて仕掛けて書いても解釈のようなものが出来上がるだけで、作者から独りでに流れ出すようなものでないと面白くないと思う。
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