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漫画家まどの一哉ブログ

   
「老女マノン・脂粉の顔」 宇野千代

「老女マノン・脂粉の顔」
宇野千代 作
(岩波文庫・尾形明子 編)

自身の不遇な生い立ちから書き起こした社会派的作品集。6編の初期作品を集録。

よく知らないが後年の宇野千代を思うと意外なほどストレートなプロレタリア文学で、弱者女性の立場から社会の矛盾を断固追求する。編者によるとこれらの作品を、後年作者は無かったことにしているそうだが、これも人気作家の世渡りというものか。

「巷の雑音」:ローンでミシンを買って、これで弟の学費も出せるし故郷で伏せっている父親の助けにもなると、いかにも世間知らずの若者が見る儚い夢。そしてあまりの労賃の安さと、接客業への転身が描かれるが、主人公は社会に負けるつもりは全くないのだ。

「三千代の嫁入」「ランプ明るく」:作者の悲惨な少女時代がモデルだが、この父親のあまりのDV様に唖然とする。家族に快適な思いは絶対させない。家をきれいにすることの禁止から始まって暴力はもちろん、自分が病死する前に家の財産を全て処分して、家族に一銭も残さない。狂気の沙汰だ。

「老女マノン」:巻末のこの作品のみ一転して表現が美しい。「その日から、一日経ち一日経ち一日経ち、それが積もり積もったのにお前もそれからあのお婆さんも、同じように毎朝の化粧鏡に映る自分の顔が昨日と今日とそれからその次に次に無数に続く昨日と今日との間に少しの変わりもないものだと信じながら、つい長い月日を暮らして来てしまったのだ。」
「その闇の中に尻端折った役者たちの細い白い幾本かの脛と入り乱れ、小母さんの、同じように痩せた細い踝(くるぶし)が、大股に忙しく追いぬけて行くのであった。」

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