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「プロレタリア文学セレクション」 荒木優太 編

「プロレタリア文学セレクション」
荒木優太 編
(平凡社ライブラリー)

小説のみならず実話や読者投稿まで混じえて、労働者大衆へ懸命の訴えを試みたプロレタリア文学の名品数々。

芸術性を二の次にしても資本主義社会の矛盾・真実を伝えるべく闘った作家たち。それでも時代を超えて残るものは、単なるリアリズムに留まらないさすがの芸術性を感じる。第一部・第二部とも印刷製本の現場に関わる作品が多い。この中には編者の企画で、プロレタリア文学の近くで並行していた作家も含まれている。

宮本百合子「雲母片」:巻頭のこの短いエッセイがいちばんみずみずしく、母と少女の穏やかな幸福感にあふれていてよかった。こころ温まる読後感。

片岡鉄兵「アスファルトを往く」:各地に伸びるアスファルト舗装。そこは自動車の極楽、失業者の針の道。ということで何か歌うように散文詩の如く区切り区切り書かれてるが、リズムが悪くて読みにくいことこの上ない。向いていないのではないか?

横光利一「高架線」:工事現場に一時的にできる大きな穴のなかに入り込んで暮らす浮浪人たち。さすが新感覚派というべきか、リアリズムを離れてイメージが広がる絵画的な印象があり、この方法で過酷な現場を描くのは無理ではなかろうか?

大田洋子「検束のある小説」:労働運動家の夫を持つ家政婦の女と、病身でお屋敷に暮らしながらも密かに労働運動を支援する若き淑女。そして浮気を繰り返すブルジョワジー夫の視野狭き妻。この3人が出くわして面白いが、こんな淑女実際にいるかな?

坪井栄「種」:活動家の息子が死んだ後も、名産品を持って地方からやってくる母親。活動家のみんなに心ささしい老婆が可愛らしく切ない。さすがに庶民を描いて温かい坪井栄。

葉山嘉樹「寄生虫」:4歳の娘に巣食って栄養を奪取するにっくき寄生虫。何匹でも引っこ抜いて懲らしめずにおくものか!かなり戯画的に書かれているがこれも一種の韜晦なのか?

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