漫画家まどの一哉ブログ
「正岡子規ベースボール文集」
「正岡子規ベースボール文集」
(岩波文庫)
まだまだ野球が珍しかった頃、その魅力にとりつかれ大いに運動した、まだ病を得る前の子規。その若く溌剌とした文章を編纂。
「今やかの三つのベースに人満ちてそぞろに胸のうちさわぐかな」
野球自体を題に撮った句や歌はわずかだが、これがいちばんおもしろい。この時代スポーツといってもその種類はわずかで、短距離や幅跳びなど陸上競技があるばかり。子規からするとそれは単純なもので面白みに欠けるとしている。それに比べて唯一の球技であるベースボールの面白さたるや!と言う具合で元来室内的な生活を送る子規が戸外で運動しているのもやはり若いせいもあるだろう。バットはあるもののグローブはなく素手。投球は基本ワンバウンドのようだ。
野球のルールを文語にて縷々解説しているが、なかなか知らない人には伝わるまい。
「地獄に行ってもベースボール」という章にある「啼血始末」という小説(といってもセリフばかりで戯曲のようなもの)が愉快愉快。閻魔大王の前で生前の行いを確認されるわけだが、子規の弁明は脱線に次ぐ脱線でなんども鬼に注意されるありさま。やはりこの人は病苦の印象があるが、本来的には快活な明るい人だったのではなかろうか。
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