漫画家まどの一哉ブログ
「ここから世界が始まる」 カポーティ
「ここから世界が始まる」
カポーティ 作
(新潮文庫)
若きカポーティが残した14篇の小品を収録。まだ10代の頃の習作から始まり、やがて秀作へ結実していく様子が手に取れる。
カポーティ体験なしで読んでみたが、なんとなく大味なざっくりした感触で、話の途中で終わってみたような仕上がりは荒削りなものを感じた。若書きであることを知らずに読んでいた。
自分より社会の人間を書こうとするタイプらしく、様々な世間にうごめく人々をが登場して飽きない。100歳に届こうかという頑固者の貧しく意固地で偏屈の老婆をはじめ、孤独な女性が多く登場する。学生である女子たちも教室の中で常に孤独だ。そして黒人であったり黒人の血が混ざっていることで差別されたり、とうとう死神に出会ったりする。作者がまだ若いのに人生半ば過ぎた女たちがよく書けるなと感心する。
若くして自身やその周辺のことではなく、人間一般がこれだけ見れる、書けるということはさすがに才能であって、文庫解説にもあったが次から次へと書かずにはいられないのも仕方がない。社会を見れば材料はいくらでもあるのだ。
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