漫画家まどの一哉ブログ
「わがままなやつら」 エイミー・ベンダー
「わがままなやつら」
エイミー・ベンダー 作
(角川書店・管啓次郎 訳 2008年)
奇想であり荒唐無稽な出来事といかにも人間臭い女や男たち。稀有の作風で描かれる15の短編。
異形の者が多い。たとえば頭がアイロンである子供や、9つの指が鍵になっている少年。ペットショップで売られる小さな人間たち。などありえない設定ながらSFショートストーリーでもなく、静かに人間の内実が語られていくような落ちついた感触。いかにも不思議。話が不思議というのではなく、なぜこんな作品が成立するのかが不思議でならない。
シュールな感覚を面白がるより、描かれる人間たちが魅力的で目が離せない。現実的な話もある。例えば次々に狙った子持ち女性をモノにするマザーファッカーなど、嘘でありながらこんな奴がいても不思議ではない。またダサくてうざくて虐められる同級生の女子も登場。なるほど確かに男も女も人間存在の本質に迫るというほどの深刻さはないが、市井の人間風俗がよく描けていて面白い。そしてこの筆力をベースにジャガイモが人間の子供に育っていく奇妙な話を語られるのだからたまらない。
果実の名前を固体・液体・気体で造形して法外な値段をつけているフルーツショップの話が面白かった。
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