漫画家まどの一哉ブログ
「星に降る雪/修道院」 池澤夏樹
読書
「星に降る雪/修道院」
池澤夏樹 作
「修道院」:非常に美しい通俗小説。あまりにもスラスラ読める。さらさらと流れていくような読書感覚。青い海と眩しい太陽そして朽ち果てた修道院。すべて日本人が簡単にイメージできる範囲で美しい地中海の島が描かれている。親切な宿や村の人々。そこで知った壊された礼拝堂をたった一人で再建しようとした孤独な男の話。それらもみな分かりやすく、言わば定番で読者が容易に想定できる範囲だ。
この孤独な男はなぜ礼拝堂を修復しようと思ったか。それは過ぎ去った女友達とのみだらな快楽の日々であり、そして男友だちも巻き込んで起きた争いと殺人の悲劇の果て。彼の修復行為は過去に犯した罪に対する償いであったのだ。信仰にたいする深い洞察はなく、きちんと辻褄の合った悲劇が明らかにされるわけだが、童話のようにわかりやすくまとまっていてなんの違和感もない。
「星に降る雪」:雪山で雪崩に遭遇し共通の友人を失った男女が、主人公の職場であるニュートリノ観測所で出会い、忌まわしい雪崩事件後の思いを、まずセックスしてから語り合うお話。
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