漫画家まどの一哉ブログ
「日々雑記」 武田百合子
読書
「日々雑記」 武田百合子 著
「日々雑記」 武田百合子 著
昭和も終わろうとする1988 年から1991年まで雑誌「マリ・クレール」に連載された作品。作者の最期作であり、「いなくなった人たちに」という巻頭言がかなしい。
記憶に新しい時代の日記なので親近感がわく。映画や買い物に出かけ、食事して帰るといった日常。食事の内容もこまごまと書いてあってたのしい。いつもながら食堂にいるまわりの客の食べているものや、買っていったものまで観察している。公園でも映画館でもこんな人がいたという描写がそれだけで不思議と魅力的だ。
考現学的客観と言おうか、作者自身の内面にこだわらずにストレートに世界を見て感じる能力があって、読んでいて気持ちが良い。
しかしやはりもう泰淳はじめ、知り合いの作家たちが亡くなったあとの人生だからだろうか、たのしい日々を綴っていてもどことなく寂しさが漂う。
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