漫画家まどの一哉ブログ
「快楽の館」
読書
「快楽の館」 アラン・ロブ=グリエ 作
いわゆるヌーヴォー・ロマンの先頭を走ったロブ=グリエの作品。物語が時間の流れとともに一本の線となって進む通常の小説のかたちをとらない。まるで渦巻のように螺旋状に同じところをぐるぐると回ってくりかえしくりかえし進む。
エピソードはある。なんといっても殺人事件がある。香港の庭園を舞台にストリップまがいのショーが開かれている。娼婦を身請けするために金策に奔走する。黒犬をつれて歩く侍女。失恋して自死する青年。殺人事件もナイフで刺されたような、黒犬に噛み付かれたような、毒を盛られたような、はっきりしない様子だ。あるエピソードが実際のことだと思っていると、それが実は劇中の話だったり、かと思っているとまた実際の出来事にすりかわっている。
作者おなじみの極めて客観的なカメラ目線の描写が連続していると、いつのまにか一人称に変わっていて、この一人称は誰のことなのかも不明だ。
そんなふうにめまいがする感じで一つの世界を構成しているが、はたしてこれが通常のストーリー展開で書かれたものとはまた違った面白さがあるかというと個人的には疑問だった。
PR