漫画家まどの一哉ブログ
「宇宙戦争」
読書
「宇宙戦争」 H・G・ウェルズ 作
映画は未見のまま作者ウェルズを信じて読んだ。
なんといっても火星からの侵略者に襲われたロンドンは汽車と馬車の時代。そんな時代に金属製でピカピカと光る大型戦闘マシーンが現れるのだから、その落差たるや現代SFの比ではない。火星人の大型戦闘マシーンは三本足の乗り物で、ヒュンヒュンと地上を走り回る。火星には車輪という概念がないという設定なのだが、今でこそ人間が乗り込んでの巨大ロボは数多溢れるけれど、これはウェルズがまっ先に考えたアイデアではないかとも思う。乗り込んでるのは火星人だけど。
自分にとっておもしろい初期SFは、現実社会の描写がしっかりとリアリティを感じさせるもの。幻想小説のつもりで楽しんでいるので、現実をきっちり書いてもらった方がより空想が映えるというものだ。ウェルズの短編はみなおもしろい。こういう長編でも飽きずに読めるのは、戦闘自体を描こうとしていないからだろう。だいたい火星人と当時の人類では力の差がありすぎて戦闘にならないから、地球人はただ逃げ惑うばかり。そこを多く描いたパニック小説と言えるかもしれない。英雄が出てこないから読めた。
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