漫画家まどの一哉ブログ
「南十字星共和国」 ブリューソフ
読書
「南十字星共和国」ワレリイ・ブリューソフ 作
「南十字星共和国」ワレリイ・ブリューソフ 作
20世紀初頭ロシア象徴主義運動の指導者ブリューソフの短編集。
幻想文学といえばそうだが、幻想的なイメージ溢れるというほどの味わいはない。耽美で詩的な言葉に酔いしれるわけでもなく、不可解で理不尽な出来事に翻弄されたりもしない。トリッキーなショートストーリーに近いところもある。
夢や鏡をテーマにした数篇は、よくある設定にもうひとひねり加えて面白く作ってあるが、作者の現実主義者の側面が悪夢的な味わいを削いでいる気がする。
表題作「南十字星共和国」は架空の共和国で撞着狂という感染症が流行り、人々は思いと真逆の行動をとるようになって国家が破滅して行く物語。「姉妹」は妻を含めて三姉妹全員と性愛関係を深めるようになった男が逃げようとして逃げ切れず、舞い戻ってきて悪夢に襲われる話。「最後の殉教者たち」は革命政府に抵抗して集まった宗教者達が殺される中でも互いに身体を求めあっている話。
いずれも面白いがなぜか一直線の構成でひねりがなく、事態がだんだんエスカレートしていって、まだまだエスカレートしますという展開。直球一本勝負のような小説だ。
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