漫画家まどの一哉ブログ
「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」 ジュノ・ディアス
読書
「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」
ジュノ・ディアス 作
「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」
ジュノ・ディアス 作
オスカーはぶくぶくと太った女の子にまるでモテないオタク青年だ。SFドラマやアニメに対する蘊蓄はふんだんにあり自分でも小説を書いている。現実の女性に対するアタックはことごとく撃沈の結果となるありさまで、それでもドミニカの男かとバカにされるくらい、周囲はマチズモに支配されている。そんなオスカーの悪戦苦闘と悲しい結末を中心に、彼の母親やその親などが生きた独裁政権下の恐ろしい社会も描かれる。
私はオタク趣味がないので、SFやアニメのキャラクターやエピソードをふんだんに盛りつけられても特別な感慨はない。対するマッチョ層とオタクとの分かりやすい対比も両極端すぎて他人事といった気がする。それでも主人公オスカーのオタクっぷりのリアルさと語り口のうまさで、面白く読める。
作品を紹介する側からはこのオタク文化の面が専ら強調されているが、それ以外の姉や母親など女達を描いた部分が秀逸だ。
とくに母親の捨て子としての生い立ちから、華麗な肉体を武器として生き抜いていく青年時代。そしてギャングとの悲壮な恋愛など、マイノリティながらも自尊心を失わず毅然として戦い生きていく。そんな母親から全否定されながらも、同じく堂々と我が道を行く姉。いずれもオタク青年オスカーとは対照的な存在だが、こんな強い女達をよく書いたなと思うほど書けている。オタク文化をふんだんに盛り込んだことを標榜しなくても、この女達を描いたことだけで名作だと思う。
PR
COMMENT