漫画家まどの一哉ブログ
「人形つくり」 サーバン
読書
「人形つくり」 サーバン 作
「人形つくり」 サーバン 作
森の中の全寮制女子校。つまらない毎日を送っていた生徒クレアは、敷地に隣接する古い屋敷に住む人形作りの青年ニールと知り合いになる。不思議なことに人形達は彼の魔法によって命あるもののごとく動き出すのだった。やがて恋に落ちたクレアはニールの命じるまま人形のモデルとなるが、実は死と引き換えに魂を人形に宿される運命が待っていた。
読み進むにつれ、だんだんと主人公の少女が魔術を操る男の魔手にかかって行き、いよいよどんな幻想的な仕掛けが始まるのかと思っていると、クライマックスに差し掛かるに連れて詩的で耽美幻想的な雰囲気は影を薄め、ホラー・ミステリーの事件解決パターンになってしまう。
なにしろ突然周囲に登場人物が増え、男の悪事が明らかになり、主人公の決死の適地侵入と最後は火災によって物語は締めくくられる。まさにエンターテイメントの常道的展開で、間違っても芸術の方に行かない。
併録の「リングストーンズ」でも主人公の不思議な経験が創作であることが最後に判明し、和やかな雰囲気で終わろうとする時、ただ一点どうにも説明がつかない出来事に気付き、するとやっぱりあの不思議な事件は本当だったのか?という解決できない謎が残る。これもエンターテイメントの定番の展開。
作者サーバンはそんなに売れっ子作家ではないが、この誰でも読みやすいお約束の作風を外していない。そこが自分としては物足りないところだった。
PR
COMMENT