漫画家まどの一哉ブログ
「ブエノスアイレス食堂」 バルマセーダ
読書
「ブエノスアイレス食堂」
カルロス・バルマセーダ 作
「ブエノスアイレス食堂」
カルロス・バルマセーダ 作
アルゼンチンはマル・デル・プラタの街で1世紀近くに渡って人気を誇ったブエノスアイレス食堂。その歴史を作った数々の天才料理人の物語でありながら、実は猟奇殺人事件が本題という奇妙な小説。いやそれはないやろと思われるカニバリズムに始まりカニバリズムに終わるのだ。
いかにしてブエノスアイレス食堂が始まり、どうやって引き継がれて来たか。創業時に天才料理人カリオストロ兄弟が書き残したレシピブック「南海の料理指南書」が、かろうじて受け継がれ、時代時代の名コック達によって解読・実践されていく。今もアルゼンチンに残る人気料理の出来るまで。その素材・調味料など細かく紹介され、どんな料理か想像もつかないが、たしかにおいしそうだ。
そうやってブエノスアイレス食堂周辺に蠢く人々の来歴が行きつ戻りつ語られ、これはいったい何が書きたいの?とそろそろ飽きかかる頃、赤ん坊の時に母親の死体を貪った主人公によって、おぞましい連続殺人事件がくりひろげられる。もちろん天才料理人としての腕をぞんぶんにふるった食人事件なのだからたまらない。
このカニバリズムにリアリティを求めても仕方がないが、食堂の歴史著述と同じ筆致で淡々と描かれるとそんなことは気にならず、直接的な恐怖をあおるふうではないので一種幻想文学のような感触があります。ムシャムシャ。
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