漫画家まどの一哉ブログ
「ゴドーを待ちながら」サミュエル・ベケット
読書
「ゴドーを待ちながら」 サミュエル・ベケット 作
「ゴドーを待ちながら」 サミュエル・ベケット 作
あまりにも有名な戯曲ながら、舞台を見たことも無ければ読んだことも無かった。不条理演劇の代名詞という謳い文句はもちろん承知だが、なんだふつうにおもしろいではないか。今まで読んだわずかな小説作品と変わらない。ナンセンスも腰を据えてやりだすとこうなるという気がする。
笑えるか笑えないかは読者が勝手に反応すればよいのだが、コメディやコントの世界は笑えるようにリズムが仕掛けてあるので、安心して笑ってしまうし、笑いのために登場人物もおかしなやつの周りにはちゃんとまともなやつがいる。そういうコメディのお約束はベケットの作品には当然ないのだけど、実際舞台を見れば役者の演技によって笑ってしまうかもしれない。
登場人物は全員おかしなやつばかり。道化役といえばそうだが、それならまったく他人事としてへらへら笑って見ていられるかというと、そんな気はしないのが不思議なところで、どうやらコメディの範囲で描かれるわかりやすい道化ではないようだ。おかしな連中だが、根っこでは我々と同じものを抱えているのがわかるし、それがまた痛々しいほどに不遇だから他人事ではない気がする。そんな人物が筋の通らぬ意味不明な言動に終始していて、なにもかもが圧倒的に思いのままにならない。手探り状態で訳も解らないままこの世界に投げ込まれているカンジ。もうこれは実にわれわれの人生そのものですよ。ああ、なんて不条理なことでしょう。
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