漫画家まどの一哉ブログ
「アーモンド」 ソン・ウォンピョン
「アーモンド」
ソン・ウォンピョン 作
(祥伝社・矢島暁子 訳)
脳の中のアーモンド(扁桃体)が原因の失感情症の少年。自分の感情も他人の感情もわからないまま生きてきた彼は、自分とは対照的な荒れ狂う少年と出会い、しだいに人間として成長していく。韓国ベストセラー小説。
感情をもたない主人公の少年は怪物と呼ばれて育つが、その様子を興味本位に面白く扱っているわけではなく、落ち着いた静かな調子でその不思議な生活が語られていく。しかしストーリー展開はわかりやすく派手な部分もあって、母や祖母が襲われたり、やくざ者の住処に飛び込んだり、やや通俗的な味わいも。そのせいか連載漫画を読んでいるようなわかりやすさと面白さがあって飽きさせない。
これは映画製作者でもある作者のサービス精神であり、けっして作品の品位を下げるものではない。失感情症の少年も友人となった不良たらんとする暴力的な少年も、若者たちは深い愛情をもって描かれていて、主人公に感情がないということを忘れてしまうほど感情移入してしまう。やはり彼らがまだまだ未熟で、まさに今一瞬一瞬に成長してゆくところに心が動かされる。
そしてそれは私個人が大人の目で見ているわけではなく、私の体験しなかったことを彼らに教えてもらっているのだ。
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