漫画家まどの一哉ブログ
ヘンリー・ダーガーを見た。
私のまわりの漫画家達にもファンが多いヘンリー・ダーガーを見てきた。この魅力を解説する能力は自分にはない。アールブリュットの発するイノセントな魅力というものは、手持ちの言葉ではとても追いつかないものがある。
個人的な感想では、まず線の弱々しさ、彩色の弱々しさにひかれた。人間社会を生き抜いていくパワーがなく、自分を守るすべをしらない赤ん坊が引いた線のようだ。そして描かれる少女達はみな人形のようであり、あるいは昔の少女漫画のようであり、悲惨で残酷な戦争物語を生き抜いている登場人物にしては夢の世界の住人のように重さがない。その証拠に巨大な花の中でふわふわと蠢いているではないか。
また時には半裸・全裸の少女達が、きわめて過酷な戦争の主人公であるというのは、昨今主流の戦闘系美少女の設定と、心理学的には同じではないのか?ところが裸の少女達にはペニスがついているから、この場合の美少女という位置づけはかなり微妙な、男女差がはっきりしない幼児期の精神性で成立しているのかもしれない。
ところで独り引きこもって「非現実の王国」を築き上げることは、多かれ少なかれ漫画家なら持っている気質だと思う。ヘンリー・ダーガーの作品は絵画ではなく、ストーリーのための線画であり、ところどころフキだしもあって、あきらかに漫画の領分だった。
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