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漫画家まどの一哉ブログ

   
「雨瀟瀟」mixiに同じ
読書
「雨瀟瀟」
永井荷風
 作

しとしとぴっちゃ~ん。雨が降り続く夜など、一人暮らしの老境、いかばかり寂しかろ。そんな荷風のつぶやきが縷々綴られた私小説。どうしても想いは時代の移り変わりを嘆くほうへむかうようだ。それが現代とちっとも変わらないところがおもしろい。いま自分は滝田ゆうの短編を読んでいて、ここに描かれる風俗に気持ちが入る世代はギリ自分たちが最後かもと思っているが、ことごとくデジタルになって行く世の中、アナログの風情が理解されるのはいつまでかなあ…。などと嘆くのとちょうど同じ様子が、この荷風の小説でも登場する。以下荷風の友人の言葉。

「家の娘は今高等女学校に通わしてあるがそれを見ても分かる話で今日の若い女には活字の外は何も読めない。草書も変体仮名も読めない。新聞の小説はよめるが仮名の草双紙は読めない。(略)稽古本の書体がわからないのはその人の罪ではない。町に育った今の女は井戸を知らない。刎釣瓶の竿に残月のかかった趣なぞは知ろうはずもない。(略)僕はもう事の是非を論じている時ではない。それよりわれわれは果たしていつまでわれわれの時代の古雅の趣味を持続して行く事ができるか、そんな事でも考えたがよい。」

そして荷風本人は
「(略)二葉亭四迷出て以来殆ど現代小説の定形の如くなった言文一致体の修辞法は七五調をなした江戸風詞曲の述作には害をなすものと思ったからである。このであるという文体についてはわたしは今日なお古人の文を読み返した後など殊に不快の感を禁じ得ないノデアル。わたしはどうかしてこの野卑蕪雑なデアルの文体を排棄しようと思いながら多年の陋習遂に改むるによしなく空しく紅葉一葉の如き文才なきを嘆じている次第であるノデアル。」

わっはっは。

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