忍者ブログ

漫画家まどの一哉ブログ

   
「道草」 夏目漱石

読書
「道草」 夏目漱石 作


作者の自伝的小説。幼い頃養父であったが今はすっかり縁が切れている男がふと訪ねてくる。親類のあいだでもかかわらないほうがよいとされる強欲な人物なのだが、主人公は断りきれずに家にあげてしまう。案の定金の無心なのだ。これも主人公ははっきりと断りきれないまま数円の現金を渡すことになる。この関係がずるずると続く。そんな夫の煮え切らない態度を妻が快く思わないのは仕方がない。夫婦はつねに相手のはっきりしない本音をさぐりながら不満をつのらせていて、理解し合うということがない。やがて妻の父親や、かつての養母までも彼の懐をあてにしてやってくるようになる。


書かれていることはこれだけで、人生によくあることの内でもかなり憂鬱な出来事だ。内心を赤裸々に描いた自然主義文学の名作ではあるのだろうが、よくこんな鬱陶しいことをコツコツと書いたなと思う。とにかく他人にとってとても面白いと思える題材ではない。生活の実際的なことにとんと意識の働かない文学者の日々の悩みを描いたのだ。ただこれを無闇に芸術家の魂の問題として納得することは自分にはできなかった。


そもそもすべて主人公に度胸がない故に起きてくる問題であって、最初に腹をくくって嫌なやつにははっきり断ればよい。また、妻には何をしてほしいか、待っているのではなく常に気持ちをオープンに自分から接していれば、夫婦間ももうすこし快活なものになるだろう。ひとえに主人公に覚悟というものがなく、問題に正面から向き合うことから逃げているのがいけない。芸術家だからどうだというほどの問題ではない。私小説の世界には伝統的に破格のダメなやつがいて自分は大好きだが、漱石はちょっと風情が違っていて、ダメ人間というわけではないが、こんな鬱陶しいことを偏執的に細かく書いてしまえるほどにめんどくさい神経の持ち主なのだ。

拍手[1回]

PR
  
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
カレンダー
11 2017/12 01
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
フリーエリア

「世の終りのためのお伽噺」
アックスストア
「洞窟ゲーム」
アックスストア 西遊
「西遊」
amazon ヨドバシ.com
アックス75号
アックスストア

祭り前

秘密諜報家
最新コメント
[08/13 筒井ヒロミ]
[02/24 おんちみどり]
[05/10 まどの]
[05/10 西野空男]
[01/19 斎藤潤一郎]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
madonokazuya
性別:
非公開
自己紹介:
漫画家
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
カウンター
カウンター
フリーエリア
Copyright ©  -- まどの一哉 「絵空事ノート」 --  All Rights Reserved

Design by CriCri / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]