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「イワン・デニーソヴィチの一日」ソルジェニーツィン
読書
「イワン・デニーソヴィチの一日」
ソルジェニーツィン 

もっと悲惨で過酷な囚人の労働現場を予想していたら、なんとも楽しい生活の報告だった。捕虜=スパイという罪名でラーゲリへ送られた主人公はじめ、スターリン時代の虜囚はみな理不尽な理由で収容されているわけだが、たとえば高杉一郎「極光のかげに」のようなものを想像しているとまるで違う、いたって明るい生活の記録だ。
それは主人公がインテリではなく平凡な農民であるからだろう。そもそもラーゲリでの扱いがさほど非人道的なものではなく、屋外での労働が極寒であることは間違いなくとも、死なない程度ではあるし、朝から日暮れまでであるし、レンガ積みの労働現場での創意工夫、人材の適材適所、すみやかに丁寧に仕上げた仕事の喜び(囚人として強制されている労働とは言え、やる気を出して取組めばそれは喜びに変わる)など現代日本のブラックな現場と比べてもたぶんマシなほうではないだろうか。


班行動を基本とした団体生活は、われわれ日本人にとって慣れ親しんだもので、寮生活でなくとも学校現場で幼い頃から鍛え上げられている。全く違和感がない。人徳ある班長のもと力を合わせて班メンバーの利益になるように食堂や仕事場で立ち回る主人公の誠意もよくわかるというものだ。いかにして食事を多く獲得するか、看守の目を盗んで個人用の道具を持ち運ぶか、タバコを手に入れるか、頭は常にフル回転である。
そして就寝にあたって主人公は、「ああ今日もいい一日だった」と幸福をかみしめるのである。

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