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「日本の近代化と民衆思想」 安丸良夫

「日本の近代化と民衆思想」
安丸良夫 著
(平凡社ライブラリー)

梅岩、尊徳など近世通俗道徳から始まり、丸山教・大本教など明治期新興宗教に引き継がれた日本民衆思想。近世から近代へと民衆蜂起の思想的変遷までをたどった日本民衆史の記念碑的名著。

30代半ばに読んでおおいに感心した名著を30年ぶりに再読。さすがに面白かった。
石田梅岩や二宮尊徳の提唱するのは勤勉・倹約・正直などの通俗道徳なのに、それがなぜかくも日本社会思想史の上で重要な役割を果たしているのか。かねがね疑問だった。博打や放蕩に人間は抗えないもので、村を破滅から守るためにはこのような強力な道徳的戒めしかない。
しかし当然ながらそれらは社会構成そのものの批判には及ぶものではなく、本書後半第二編「民衆闘争の思想」で打ちこわしなど一揆の変遷でも取り上げられるが、幕藩体制以外の視点にはとうてい届かないものだった。これが限界だ。

それでも民衆は近代化へ至る過程で、けっしてなんの哲学も持たなかったわけではなく、しだいに社会を支える主体へと目覚めていったことがわかる。
ところが悲しいかな通俗道徳を旨とする近代の新興宗教は、丸山橋をはじめ天理教・大本教など、みな神道系の宗教だったため容易にの天皇制支配にからめとられてしまう。これが限界だ。

といった近代化の過程の一方の主人公であった民衆意識の変転が手に取るように分かっておもしろい。再読だがあらためて蒙を開かれる思いだった。

明治初期、生肝や生き血を取る恐ろしい耶蘇教に魂を売った新政府への反対一揆。村へ赴任した異形の警官を見るや恐怖に駆られて殺害してしまう逸話は、この著作でもっとも印象に残っていて、巻頭にあったと記憶していたが巻末だった。

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