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漫画家まどの一哉ブログ

   
「嘔吐」 サルトル
読書
「嘔吐」サルトル 作


新訳が出ているようだが旧訳の方を読んだ。

存在とは何か。重要な哲学的テーマを文学の力を借りて表現した代表作。この野心的な試みが全シーンにわたって展開されているわけではなく、有名なマロニエの木の根っこを見て吐き気を催すシーンはかなり哲学的な内容に直接切り込んでいて、そうかと思えば彼女との再会などふつうに小説的だし、混淆した感がある。

サルトルはメスカリンの力を借りて幻覚状態を体験しているようだが、主人公が身の回りの諸々の具体性から離れて存在自体にとらわれていく感覚、この遊離感は、ちょっとした脳の誤作動みたいなもので、案外誰にでもあるものかもしれない。

小説全体としてこの構成が必要だったかどうかわからない。哲学と文学の直接的な融合ということで、小説としてはやや生硬なニュアンスが出てしまっている気がする。しかし彼女と別れていよいよ暮らし慣れた街を離れようとする最後のレストランでのシーンなど、お気に入りのジャズをかけてもらいながら、本を書くことによって過去の自分を認めようと決意するところは、小説の醍醐味が十分に味わえる感動的な名分で、この人やっぱりうまいんだなと思った。

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