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「人間失格」

読書

「人間失格」 太宰治 作

これは人格障害者の半生記である。純粋な私小説ではなく、作者をモデルにしたモデル小説なのだが、あきらかに主人公は太宰だ。人格障害とはいわゆる神経症・精神病ではないのだが、いかんせん人生を平穏に送るにはいささか問題ある性格ということで、異常性格の分類と同じものかもしれない。

この主人公の場合、相手の感情を害することを極端に恐れ、全く自分を偽って相手の意向に会わせ、そのために終始道化を演じている。自分ではちっとも楽しくなくても世間が喜んでいれば、そこにかろうじて安心を見つけることができるが、基本的に世間及び他人は恐怖の対象である。少年時よりそういった企みの成功と失敗が語られ、長じては世間全体といったものの本質が、実は一人一人の他人がいるに過ぎないことに気付いていささか落ちつきはするものの、結局身の回りの問題からは逃げ回って酒ばかり飲んでいる、まことに情けない実例の数々が披瀝されるわけだ。 まさに「人間失格」だが、人格障害ゆえの人生をそういうなら、いろんなタイプの人格障害者は皆そう言って正解なわけで、このタイトル自体をさほど大げさに考える必要は無い。 

ここに心弱く純粋で真剣な精神が、理解なき世間と闘って敗北していく構造を読み取るのは、いささか美化しすぎだと思う。真剣であることは立派なことだが、作者の場合けっきょく酒に逃げているだけであり、読者はその弱さを同情しながら楽しめばよいので、弱いことを別の言葉で正しいことに転化させるのは一種卑劣ではないか。そういう意味で文庫本(新潮文庫)の奥野健男解説はむかしながらの文学者聖人説であって、弱き美しきかなしき純粋な魂という捉え方は聖化しすぎで、やはり簡単に人格障害だと言ってしまうほうが解りやすいのではないか。

ところでこの小説自体はウンザリするほど面白い。

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