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「上海」 横光利一

読書
「上海」 横光利一 作


やはりスタイリッシュというのがいちばん合っているのだろうか?これぞ新感覚派という作品。既成の概念に沿って物事を整理しない、視覚・聴覚・嗅覚の感じるままに描くという点では、みごとに面白さが出ていると思う。1925年当時の猥雑な上海の様子が手に取るように伝わってきて、文章の魅力・迫力を存分に感じた。もちろん当時の上海を知らないから言えるのであるが。


五感で感じられるものの描写は申し分が無いのだが、それは内面を描かない方法であるとも言えるわけで、人物のリアリティが感じられず読んでいて虚しかった。主人公は貿易商社のかっこいいビジネスマン2人で、こいつらが虚無主義者なのであるが、なぜ虚無主義者なのかがわからない。長身で体つきもよく、トルコ風呂やダンスホールに女友達もいる。そんなどこかニヒルな商社マンという設定は、よく出来たエンターテイメントの主人公でしかなく、相手役のヒロインには夜の街で働く頭のキレる女や娼婦へと身を持ち崩す哀れな女、はては中国の美人革命家まで登場するが、役どころ以上の生々しさがない。まさに娯楽映画としてみれば申し分ない配役なわけで、映画的という意味では、それこそ五感に直接うったえる新感覚派ならではの狙いどおりの出来映えであった。


それだけになにを読まされているのかわからなくなってくる。5.30事件の排日・排英騒擾の展開はなかなかにスペクタクルで、街はたいへんなことになっているので読んでしまうのだが、いかんせん登場人物に上滑り感があり、では社会派小説かというとこれも表面的。文体自体はリズム感も緊張感もあって楽しいのに、なんだろうこの不毛な感じ。マルロー「人間の条件」にも虚無的なテロリストが登場するがこんなじゃなかった。

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