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漫画家まどの一哉ブログ

   
「モロイ」 サミュエル・ベケット
読書
「モロイ」サミュエル・ベケット 作
集英社

ベケットをして不条理文学と紹介されるのはけっして間違いではないのだが、カフカやカミュのそれとは著しく違った感触がある。不条理と言われた場合、素直に考えればわれわれが置かれているこの世界の道理のなさ、運命の気ままさに翻弄される様を思うが、ベケットの場合この世界自体は穏やかである。反対に主人公本人がまったく非合理で無計画で、なにをやっているのか何故そんなことをするのか皆目説明がつかない。大概は足が不自由でそのハンディは仕方がないにしても、お金もなく、思考も緩慢、欲もなく希望も絶望もない。かと言って悟っているわけでもない。常に不潔でのろのろとしていて、現代資本主義世界では生産性のなさを非難されてしまいそうだが、本人は楽しげである。
通常の意味での人間存在のあり方が無化されている。しかし虚無主義といったものとはちょっと違う。ただただナンセンスであり、精密に描かれたバカボンの親父のようなものだ。

さて第1部で主人公モロイの無軌道ぶりが描かれたあと、第2部に変わると意外にも主人公は刑事ジャック・モランに変わり、なにかしらモロイが事件になっているようだ。これはベケットにしては珍しい展開でわくわくとしたが、始まってみるとこのモランという男がモロイに勝るとも劣らぬ脱落者で、なんのことはないいつものベケットだった。家庭内では行動に脈絡のない小人物。だいたい捜査に行くのになぜ長男を連れて行く?遠くなのになぜ歩いていくのか?結局この男も生活者一般から落ちこぼれてしてしまう。最終的にはやはり足を患い、なぜか庭で暮らす困窮生活。併録の短編作品「追放された者」「終焉」の人物もみな同じだ。作中過去作の主人公(自分の読んだ中ではワットやマーフィ)の行く末が案じられているのが面白かった。

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