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「ピサへの道」七つのゴシック物語1 ディネセン

読書
「ピサへの道」七つのゴシック物語1 イサク・ディネセン 作


不思議なことや奇抜なことがあれば幻想文学かというとそうではなくて、幻想文学のつもりで読んでないのに何やら不思議な感覚を得るというぐらいがよい。この短編集はそのあたりがちょうど心地よく、落ち着いた味わい深い描写を楽しむことができる。ストーリー上の大きな仕掛けは要らないくらいだが、なんとどの作品も最後にどんでん返しがあって驚いてしまう。


「猿」:猿をはじめ、院長がいろいろな動物を飼っている修道院。ある貴族の若者が古城に暮らす令嬢に結婚を申し込むが、彼女は非婚主義を貫く。この結婚話をぜひとも成功させようと修道院長は企画する。このなりゆきは面白いが猿は全く出てこない。と思ったら最後に意外なカタチで猿登場!


「ノルデナイの大洪水」:国中の人の尊敬を集める枢機卿は、洪水で被災したノルデナイの街で支援活動に励み、取り残された人達に混じって救出までの夜を明かす。残された4人が交替に語る過去の人生は波瀾万丈だ。そしてそのまとめ役たる枢機卿にはとんでもない秘密があった。これもビックリ。


ストーリー自体も面白いがそれは大筋であり、この大筋以外の小筋などはなく、心にしみ込む語り口ばかりがある。登場人物も類型的なところがなく、ただならない人間性を描いていて読み捨てにできない。キャラクターといったお手軽なものとは無縁で情景描写も美しい。それでも物語があってオチがあるという不思議な手ざわりの二重構造を持った作風。これもアリ。

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