漫画家まどの一哉ブログ
「ケアの物語」フランケンシュタインからはじめる 小川公代
「ケアの物語」フランケンシュタインからはじめる
小川公代 著
(岩波新書)
「フランケンシュタイン」の物語と作者メアリ・シェリーの人生をベースに、現代社会の様々な課題をケアの視点から問い直す。
テレビドラマやアニメ、現代文学その他社会の話題もふんだんに登場して、親ガチャ・レイシズム・エコロジーなど10の現代的テーマを考察。あまりにも多くの課題があまりにも多くの具体例(といってもドラマや文学などの作品)と共に溢れかえっているので、読んでいて落ち着かないが、これはこれでひとつの書き方だと思う。
例えば「マンスプレイニング」において、女性の意見に対して男性は必ず教え導いてやろうとしたり、女性は男性にはやさしく天使のように接してあげなければならないなどの刷り込みからの解放。「ケアの倫理」によればケアをする女性の無私性が前提とされてきた背景があって、ケアをする女性本人が自身をケアすることがないがしろにされてきた。などなど…。
全てのテーマの根底にあるのは男女の世界観の違いで、この世界が男性優位な価値観前提で出来ていることに問題の所以がある。マチズモ(フェミニズムにもある)では救い取れないゆるやかなつながりといった叡智が必要。これまでの無私的なケアの倫理は男性にとって好都合な女性観を助長する。しかしことは単純ではなく、この二分法を乗り越える丁寧な関係性を見つけていかなければならない。
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