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漫画家まどの一哉ブログ

   
ビリケンギャラリーで開催中の「アックス夏祭り」オープニングパーティーに参加。会場には各作家の展示作品とチャリティーうちわがズラリと。あらためて思うに、あたりまえだがみんな絵がうまい。ふだんアックス誌上ではモノクロの線画しか見ていない作家が、こんな色を使うのかと驚く。アックス本誌とはまた印象が変わる。杉山さん、堀さん、三本さんの作品がよかった。
シマトラさんや鳥子さんは漫画の1ページという体裁の作品だが、あらためて漫画家だなあと思う次第。私のうちわ絵もストーリーを含んでいるもので、私も含めて話がないと絵が描けないという資質だ。杉山さんの作品を見ると、小さな1枚の中にこれでもかと情報が細かく描き込まれているが、たぶん自分ならその情報量を数コマの時間の中に広げてしまうだろう(質的には杉山作品の情報は時間に置き換えられる種類のものではないけれども…)。
偏見で言うがこれがアックス以外の商業誌漫画家の展示であれば、いつもの人気キャラクターがまるで表紙絵のように1シーンを演じている様子といった作品になる気がする。そのへんが大いに違う「アックス夏祭り」。漫画家の絵を描く才能を発見することができる。17日まで。

http://seirinkogeisha.sblo.jp/
http://www.seirinkogeisha.com/
http://www.billiken-shokai.co.jp/

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自分はいつも編集後記、そして作家近況から読む。

私の16ページを短編とすれば、もっと短い掌編漫画が満載だ。4ページくらいでもちゃんとまとまってるから愉快だよ。それに長いものでは「正義隊」や「耳かき仕事人」を読むと、大ドラマならではの大きな展開やそれにふさわしい画面構成など、これらは必然的に出てくるものなのだろう。ダイナミズムがヘタウマの絵で味わえるぞ。

私は巻末近くに「いつか王子様が」という作品を発表しています。お楽しみください。
それにしても「筋子」はおもしろいわ。

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読書(6/11mixi日記より)
「木魂・毛小棒大」
里見 弴


古谷野敦が選んだ里見弴の埋もれた短編集。里見弴は大衆小説から純文学まで大量にどんどん書いた人だ。しかもここに収録されている「小坪の漁師」は92歳の時の作品。有名な「極楽とんぼ」だって80歳を過ぎて書いているのだから驚きだ。スラスラ書けるのかしらん?文体もスラスラしていて、あっというまに読み進んでしまう、流れるような語り口。それに面白いのは会話で、さすがに口調は昔風だが、男女のやり取りが軽妙洒脱、それでいてリアル。中公文庫。

「海の上」:主人公の友人が、以前雄大な山の上でひとりぼっちだった時、不思議と性的興奮を覚えて自慰行為に走ったそうだが、この主人公も周りに誰もいない海上で全裸になってしまう。この広大な空間の中なのに誰も見ていないという状況でおきる、ふしぎな性衝動を描いためずらしい小説。

「長屋総出」:2~30年このかた住み着いたきりの長屋の住人たち。この設定で連続コメディなど書けそうだ。この短編ではある家の女中がなんか様子がおかしいと思っていると、急に発狂してしまって家を飛び出す。さあそのままにはしておけないので長屋住人総出で街中を探しまわるという大騒動。捕まえては逃げられたりしてね。

「文学」:若い頃作家志望で東京を流浪し、今は人形職人となっている男が久しぶりに小説を書いた。自分の人生がモデルだ。その小説と、それを読んでいる女房という現在のシーンが交代に出てくる、小説ない小説の形式。わかいころ世話になり迷惑もかけたプロ作家にその作品をみてもらうが…。人間的成長と文学的才能は別のものだったか?

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読書
「R62号の発明・鉛の卵」
安部公房


安部公房は自分の守備範囲だが、面白かったりつまらなかったりする。これは初期短編集だが、いわゆる日本文学的情緒や日常生活感で読める作家ではないのはもとよりなので、発想の特異性が気にならない語り口でないと、自分などは読後殺伐としてしまう。シュールなものも現実の共同体が描かれているものもあるが、どちらかが必ず面白いわけでもなく、なにが自分にとって評価基準となるのか読んでいて自分でもわからない。それがいつも謎。とりあえず奇矯な設定を納得させるのは、リアリティというより文体なのかも知れない。発想主体の短編という作風は、自分と近いかもとは思う。

「鍵」:身寄りをなくした青年が天才的鍵職人の叔父を頼って訪ねてくるが、叔父は自分の発明した鍵の秘密を守るため、容易に打ち解けない。そして叔父のそばには人間ウソ発見器である盲目の娘がいるのだった。オチがあるが、なくてもよかった。

「鏡と呼子」:村の学校に新任教師として赴任したK。ところが校長や教員達、下宿先の長男と老婆など村人は皆猜疑心に取り付かれたようにお互いの動向を気にしている。もしシュールな漫画にねじ式ベースというものがあるとすれば、これは典型的なカフカベース。下宿先の長男が日がな一日、山から望遠鏡で村を観察しているというのが面白く、鏡と呼子は彼の連絡手段である。土俗的な雰囲気と、いろんなことがはっきりしないまま終わるところが味であると思う。これが一番おもしろい。

「鉛の卵」:タイムカプセルである卵形冬眠箱から出てみると、100年後の世界であるはずが80万年後だった。そこには葉緑素を持つサボテンのような人類が!主人公である古代人の生活がアイロニカルに無化されるSF短編の醍醐味あり。しかもちゃんとドンデン返し付き。

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読書
「六号病棟・退屈な話」
チェーホフ


チェーホフの小説にはいろんなタイプの人間が出てきて、それが実にリアルに描かれている。その念入りな描写に読み進めるごとに納得してしまう。登場人物にはそれぞれ人間として欠点があり、それがその人の人生を狂わせ破滅へと導いていくのだが、どれもさもありなんといった話で、しかもけっして他人事とは思えない。自分は破滅小説が大好きだが、日本の私小説の面白さとは違う観察された人間観が魅力。医者としての眼で描かれた短編集。

「黒衣の僧」:なんど読んでも面白い、幻想文学の最高傑作。主人公は博士の道を歩む秀才青年だが、疲れた神経を癒すため故郷の果樹園へと戻る。凡庸な人々の中で暮らし平凡な娘と結婚し、心は癒されたが天才の輝きを失いつつあるとき、黒衣の僧の幻影が現れて彼を病的だが非凡な人生へと連れ出すのだった。やがて破滅へ至る主人公、非凡であることと才能とは別だ。

「六号病棟」:主人公の医師は地方の病院へ赴任してきたが、そこは全く荒れた病院で、不衛生で機材不足なうえ職員はヤル気がなく経営は乱脈の限りである。こんな腐敗した状況に対して闘うには主人公はあまりに小心で勇気がなかった。ただ黙々と機械的に業務を続け、やがて時間の大半を自室に閉じこもっての読書に費やすようになる。周囲には自分を理解する教養のある人物はひとりもいない。そんな中、精神病棟である六号病棟に収容されているあるインテリの若者と知り合い、足繁く通っては話し込むようになるが、それは周りの人々に彼の発狂を誤解させるもとであった。状況に目をつぶり、病棟での日常的虐待すらも気付かなかった彼は、報いともいえる悲劇的末路へ向かう。

「退屈な話」:名声は得たが、既に年老いて衰えていく自分をはかなむ老教授。物語前半はまったく老人のグチのようなもので、ぼやきを聞かされる。しかしやがて大切にしていた家族が意に反してゆっくりと崩壊して行き、身近な人々は自分を離れ、老教授は人生の敗北を悟るのだった。これが人生だ。

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はじめて「文学フリマ」に行って来た。場所は蒲田。入場無料。文学といっても文学ばかりではなく、漫画も評論も売っている。むしろ伝統的な文芸サークルを思い浮かべると違うかも。文芸誌でありながら美少女漫画キャラが表紙であるのは、それが創作精神の基底をなしているのか?自分は偏見で判断する。申し訳ないがその意味で、やはり無駄遣いを避けたい。友人の作品のみ若干購入した。
ベンチウォーマーズ・日本海わくわくコミック・西岡兄妹・漫画雑誌架空・北冬書房・蒼天社・山坂書房・サクラコいずビューティフルと愉快な仲間達・などの皆さんと交流できて楽しかった。漫画家のイタガキノブオさんとお会いすることができた。

このようなミニコミが一堂に会するイベントは、デザインフェスタやコミティア等いろいろあり、歴史のある大会では大金が動き、中には大枚を得る人達もいるようだが、利益のほうはあまり本気で考えなくていいんじゃないか。売れるに越したことはないが、全くのアマチュアとセミプロがいて、後者のほうが売れるわけでもないし、計算できない。しかし参加すると人生の1ページを埋めることができる。埋まった方が埋まらないより意義がある。

ガロ系漫画を描いていても、その経済効果はあってなきようなものなので、やはり生活の支えとしては考えられない。もちろん考えてもいいのだが、そんなことより描きたいものがあるほうが大切だ。などとぼんやり思いながら、新作の登場人物を考えているところです。

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読書(mixi過去日記より)
「仰臥漫録」
正岡子規


子規晩年、肺炎およびカリエスのため、病床で仰向けのまま綴った日記。
妹と母親の介助無くしては、一日も生き延び得ぬ身で、その記録の多くは、三度の食事と、服薬、包帯の交換、便通などで埋められる単調な日々だ。
死を前にすると食への執着が増大するのか、病身でありながらどんどん食う。朝だけでも飯三椀、佃煮、梅干し、牛乳一合(ココア入り)、菓子パンというのが日課。子規は菓子パン好きだったようで、毎日必ず食べる。スケッチまでしている。昼や夜は、ご飯に、さしみや芋、果物、せんべいが加わって、毎日ほぼ同じような食事がくり返される。この日記の印象は食事日記でもあるというところだ。

その他。碧梧桐ら、弟子達がひんぱんに訪れて談りあったこと。
若い頃の夢(大学を出たら、ただちに50円の給料を得る。山林を開発する仕事をする)。 一人でいる時に、ふと小刀を取って、死んでみようと考えるが、恐ろしくてできない。 病苦に負けて混乱し、「たまらん、たまらん。どうしよう、どうしよう」と叫び出したこと。 などなど。

36歳で死んだが、やはり子規は破滅型のタイプではなく、社会に適応できる編集長タイプだと思った。

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読書
「かきつばた・無心状」
井伏鱒二


つげ義春が愛読書にあげていた井伏鱒二。以前自分はもうひとつ馴染めなかったのだが、近ごろはがぜん気に入っている。この文庫版短編集は身辺雑記のような日常の小事件を描いたものが多いが、けっしてエッセイではなく小説としての面白さに満ちている。文体のなめらかさにあるのだろうか、大事件でなくてもワクワクする。それだけ精密に人間を見ているし、その見方が自分の趣味に合うのだろう。

「爺さん婆さん」:まさにつげ作品の如し。田舎の鉱泉にいってみると、そこは混浴で年寄りばかりが湯治に来ている。みんな足腰が立たないから動くのがたいへんだ。しかも口だけは達者な入れ墨入の婆さんがいてこいつが愉快。

「おんなごころ」:かの太宰治はじゃじゃ馬にてんで頭の上がらない男で、死の前までの太宰の暮らしぶりを振り返った小説。またその女とは正反対の太宰がひそかに憧れていた女も登場。太宰に関しては想像通りでまったく違和感なし。

「乗合自動車」:戦時中から戦後にかけて走っていた木炭バス。これがすぐエンストするのだが、そんな時は再びエンジンがかかるまで乗客みんなで延々バスを押さねばならない。乗車賃を払っているのになんとも納得いかないはなしだが、運転手はえらそうにしている。しかも短気。

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ワケあって妻は近くに借りている事務所用のワンルームで暮らしているが、医者の指示もあり、私は現在接触禁止である。妻は双極性障害Ⅱ型を患っているが、だいぶ良くなってきた。ところが私自身が毎日連絡しないと不安でどきどきしてしまう状態だ。電話するとそれが妻に伝わって彼女の負担になってしまう。もちろん私にそのつもりはないのだが、無意識に会話に現れてしまう。つまり俺の不安を病人に背負わせている。医者曰く「あなたは奥さんを全く信用していない、信用していれば連絡しなくても泰然と待っていられるはず」とのこと。まったくそのとおり。妻は出来るだけ私と一緒に人生を築けるようになろうと病をおして努力してくれている。ところが私がそれを信用できずに、毎日の連絡のありなしにビクビクしている有様なのだ。なんと情けないことだ。なぜこうなってしまうのだろう?
もとより妻を信頼し、不安を払拭すべく努力する。それしかないことは分かっている。より自身を分析し、なにかしら堂々としたものを掴みたいものだ。そのためにもこうやって、内情を公開して気持ちを整理し、出来れば友人のアドバイスを受けよう。捨て身で望まなければ、乗り越えられない。ここが正念場だ。つづく。

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来る5/30・6/5日に開かれる「古泉智浩プレゼンツ よるひるショートショートムービー発表会」のプレ上映会に行ってきた。作家は古泉智浩・枡野浩一・羽生生純・タイム涼介・奈良崎コロスケ・堀道広・三本美治・門田克彦の各氏。それぞれ3〜5分くらいのごく短い作品だけど、みな個性的でおもしろかった。なんとも素朴で素人っぽいところがとてもいい。
よるひる店内や近くの公園で自分たちで手軽に撮っているので、そのテキトーな感じがいいのだと思う。脱力できてラクに観れた。それでもやはり漫画家の作ったものは、いつもの漫画作品と同質の個性を感じた。それは古泉作品のユルっとした日常感や、羽生生作品のストーリー感。そして堀さんのギャグや三本さんの紙芝居そのものである。
ショートムービーというものは編集の妙味があって、編集次第でよくも悪くもなるらしいが、自分にはその編集しどころは分からない。ただあまりプロっぽくガッチリ構成されているより、なにかしらヌケのある放ったらかしな感じや、意外な部分の長さなどがかえって新鮮で退屈しなかった。逆にプロの手が入ったものは、いかにもという感じで編集されていて、さすがだがつまらない気がした。


終了後近くでやってる田中六大作品展を三本さんと見学。雨まじりの阿佐ヶ谷の商店街は、情があって実にイイカンジ。会場の幻我堂はほんの小さなスペースだが、これまたいいカンジ。そして田中六大の絵画作品はいつもの古今和洋折衷の不思議な世界をお話付きで楽しめる。

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